某女子大のとある講義では、初老の女性講師が最初の5分か10分ほど世間話をするのが慣例になっている。
落語でいう所の「マクラ」みたいなものだろう。
殆どが時事ネタなのだが、やはりというか、その日は例の野次の件だった。
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「東京都議会のある議員が、女性議員に野次を飛ばして問題になっています。
その内容は女性蔑視やセクハラであるという意見が大半を占めていますし、私も概ねその通りだと思います。
ところで、みなさんの多くはパソコンやスマートフォンといった、インターネットに繋がる機械をお持ちかと思います。
そしてそれらで手軽に全世界に情報発信する手段を心得ていると思います。
思慮深いみなさんの事ですから間違える事は無いと思いますが、念のために助言しておきます。
この件でネット上で当事者を批判するのはおやめなさい。
赤の他人の失言をあげつらって公然と批判するというのは、実は非常に難しい事なのです。
私よりも年齢を重ねた人でさえも、きちんと出来ない人は少なくありません。
その割に、得るものはあまり多くありません。
批判自体は簡単です。ただし、自身の品位や人間性を損なわずに批判するというのは、これは極めて高度な技術に加えて、強い精神力も求められるのです。
これが無いままに安易に批判する。
手軽に正義感を振りかざせるので、やがてそれがクセになっていきます。
クセになっていくとどうなるか。
他人の失敗が許せない人間になってしまいます。
そして失敗を悪い事だと思い込み過ぎて、失敗するくらいならば何もしない方がいいと考え始めるようになってしまいます。
人間とは不完全なものです。肝心な時に大きな失敗をしてしまう事もあります。
何かに挑んで、成功する事もあれば失敗する事もある人と、
他人が失敗したときだけ批判し、何もしないが故に何も失敗しない人。
みなさんはどちらになりたいですか。」
(フェイスブックの匿名書き込みより)