心の窓 53 「くじけないで」
もうすぐ100歳になろうとする柴田トヨさんの詩集がベストセラーになっています。
フジテレビの「とくダネ!」でも紹介されて大反響になっていますが、読んでみると不思議と心が暖かくなってきます。
ここでいくつか引用させていいただきますので、じっくりとお読みくださいね。
「目を閉じて」
目を閉じると
お下げ髪の私が 元気に かけまわっている
私を呼ぶ母の声 空を流れる白い雲
何処までも広い菜の花畑
92歳の今 目を閉じて見る ひとときの世界が とても楽しい
「返事」
風が耳元で 「そろそろあの世に行きましょう」 なんて猫撫で声で誘うのよ
だから私 すぐに返事したの
「あと少しこっちにいるわ やり残したことがあるから」
風は困った顔をして すーっと帰って行った
「先生に」
私を おばあちゃんと呼ばないで
「今日は何曜日?」
「9+9は幾つ?」
そんな バカな質問も しないでほしい
「柴田さん 西条八十の詩は好きですか? 小泉内閣をどう思います?」
こんな質問ならうれしいわ
「自分に」
ぽたぽたと 蛇口から落ちる涙は止まらない
どんなに辛く 悲しいことがあっても
いつまでも くよくよしていてはだめ
思いっきり蛇口をひねって 一気に涙を流してしまうの
さあ 新しいカップで コーヒー飲みましょう
「あなたに」
出来ないからって いじけていてはダメ
私だって 96年間 出来なかったことは山ほどある
父母への孝行 子供の教育 数々の習い事
でも 努力はしたのよ 精いっぱい
ねえ それが大事じゃないかしら
さあ 立ちあがって 何かをつかむのよ
悔いを 残さないために
「96歳の私」
柴田さん 何を考えているの?
聞かれて困ってしまいました
今の世の中まちがっている
正さなければ そう思っていたからです
でも結句 溜息をついて 笑うだけでした
「貯金」
私ね 人からやさしさをもらったら
心に貯金をしておくの
さびしくなった時は それを引き出して 元気になる
あなたも 今から積んでおきなさい
年金より いいわよ
「朝はくる」
一人で生きていくと決めた時から
強い女性になったの
でも 大勢の人が 手をさしのべてくれた
素直に甘えることも 勇気だとわかったわ
(私は不幸せ・・・・・)
溜息をついている貴方
朝はかならずやってくる
朝日もさしてくる筈よ
まだまだ、涙なしでは読めない詩がたくさんあります。
是非、お読みください。
(引用:「くじけないで」著者:柴田トヨ 飛鳥新社)