信頼の絆
朝日新聞の小冊子からの抜粋です。
小学生の時、衛生検査というのがあった。
検査では、みな机のうえにちり紙を出す。
少女Aちゃんのちり紙は新聞紙を切ったものだった。
家に帰って
「Aちゃんのちり紙はね、新聞紙なんだよ。おかしくって」と言った。
お前はなんということを言う、と父親が言った。
「新聞紙だって立派なちり紙だ。明日からお前も新聞紙を持ってゆきなさい」
以後、検査のたび新聞紙を机に出すのが恥ずかしかった。
やがて、父が言った。
「新聞紙を見せるとき、Aちゃんがどれだけ勇気がいったか、お前もわかったろう」。
私は、父から人間の一番大切なことを教わったような気がします。
(出典:朝日新聞「暮らしの風」3月号、P17「信頼の絆を創る」)
わたしは、この文章にとても考えさせられました。
貧乏で新聞紙のちり紙を持ってきた子。
子供がそんな話をしたとき自分は「ふーん」と聞くだけの人間かもしれない。
自分はちゃんとしたちり紙を持たせることができると、安心する自分がいるしれない。
単に、かわいそう、と思うだけかもしれない。
でも、この父親は子供に同じ体験をさせることによって
相手の立場で考えるということを教えようとしている。
そして、父の一言で本当に新聞紙を持たせた母親もすごいと思います。
相手の奥底の心を理解しようとする姿勢。
これが人間として一番大切なことなのですね。
子供は、生きてきた「環境・教育・思想・習慣」で人格が出来上がります。
この父親のような姿勢で子供に接していかねば、と大きく反省させられました。