お好み焼きの具
ある小学校の参観日。
先生がいいました。
「今日はお好み焼きの絵を描きます。
その中で使う具にどんなものがあるか、みんなであげてみましょう。
どんなものが、お好み焼きの中にあるかな?」
みんな、「ハーイ! ハーイ!」と手を挙げて言いました。
ある子どもが、家でお好み焼きを作った時には使ったことはないけど、
あるお店に行ったら”チーズとお餅”も具にあったので、
「先生! チーズとお餅!」と言いました。
すると先生は、「うーん・・・、チーズとお餅かぁ。それは変だなぁ・・・。ほかにっ!」
と、他の子に、また手を挙げさせました。
その時、いままでハイ!ハイ!と楽しそうに手を挙げていた教室の空気が一変しました。
そして、すごく楽しそうに手を挙げていた空気から、
今度は「いかに先生に気に入られるか、というような答えになってしまいました。
そして、そのあと書いた絵が、全部同じようなものになってしまいました。
だれ一人、個性的な絵を描いた子はいませんでした。
参観が終わったあと、個人懇談会がありました。
その子どもの母親がこう先生に言いました。
「先生、実はあの時、教室の空気が変わりましたね。
そして児童はみんな、先生に気に入られる絵になってしまいましたね。
実際に手を挙げて、”チーズとお餅!”といった子は、ウソをついたのではなく、
本当にお店に行って、チーズとお餅を入れて食べたんです。
だから、手を挙げて”チーズとお餅と言いました。
それを、「それは変だなぁ・・・」といって、「他に」と言った瞬間、
もうその子は手を挙げなくなってしまいました。
先生に気に入った答えしか採用してもらえないと思ったんです。
それって、子どもの芽を摘み取っていませんか?
”そういうこともあるよね、それは面白いよね、と言って欲しかったと思いますよ。」
それを聞いた先生は、涙を流してこういいました。
「そういう教師にだけはなりたくない。
子どもの創造性や方向性を摘み取らないで、伸び伸びと子どもを育てて上げたいために、
威張っている先生ではなくて、子どもの能力を伸ばしたいという、
そういう夢と希望を持って、教師になったはずなのに、
それがいつの間にか、私の中で失われていました・・・。
今日は、このことに気付かせてくださってありがとうございました・・・。」
と深々と頭をさげられました。
この話は、私の知り合いの女性が実際に体験した実話です。
ご本人の了解をいただきましたので、ここに紹介させていただきました。
「氷が溶けたら何になる?」
「春になる」
こういう自由な発想を「それは違うなぁ」ではなく、「それは面白い!」と認めることで
子どもの能力はどんどん伸びていくのかもしれませんね。