奮闘記 ①夏の汗はさわやか?!

猛暑といわれたある夏の日、新しくピアノを購入された家へ初めての調律に行きました。

納品して初めての調律を「納調(のうちょう)」と言います。
私は初対面が大好きです。

「今日はどんなお家だろう。新しいピアノが入って喜んでいるだろうなぁ」

なんて思いながら、ピンポーン!

部屋に入るとピアノに真新しい楽譜が置かれていました。
「うん。バイエル下巻に入ったところかぁ。今までピアノなしでよくここまで頑張って来たね。

もうすぐ黒鍵攻撃が始まるけど私みたいに”黒鍵はキライ!” と言ってすぐやめたら親は泣くよ」

なんて思いながら調律開始。

「おっと。今日も見事に音程が下がってる。これが新しい証拠。これから美しい声に仕上げるからね。」

とピアノをなでなで。

実際納品後の調律は運送の振動もあって音は大きく狂い、
ピアノとの格闘は日常茶飯事のことではあります。(このころはまだ余裕が)

ピアノは四畳半の子供部屋。外の気温は34度。窓は見事に閉まって、エアコンはなし。

「窓をあけたら隣の家に迷惑だし、まぁいっか。ちょうど今ダイエット中だし・・・」

ところが割り振り(音階を作る基本の作業)が終わったくらいから、汗がポトリ、またポトリ。

鍵盤へ落ち始めました。

「これはイカン!」

ピアノに湿気は禁物。タオルで汗を拭きながら、さらにピアノと格闘。

調律は結構神経と体力を使うので冬でも汗をかくほどなのに、この状態はヤバイ。

ついにはタオルで”タコの八ちゃん”スタイルを決行!!

ねじり鉢巻で調律をやっている姿はちょっと異様かも・・・。

そのうち、汗が頬を伝い始めてスタイル変更。

泥棒ほおかむりスタイル!!

昔の泥棒って、なんで手ぬぐいであの頬かむりをして唐草模様の風呂敷をしているんでしょうね。

今度はあごから汗がしたたり落ちてきました。部屋はついにサウナ状態へ。そして・・・

極めつけ ”ひょっとこ”スタイル!!

これで汗の落下を食い止めることはできました。

そのとき、隣の部屋からは楽しそうな家族団欒のお喋りと、

ドアからわずかにもれてくるひんやりとしたエアコンの風が・・・。

ついに調律が終わって、いつもの一曲。

「まぁ、きれいな音。うちのピアノじゃないみたい。素敵ね」と奥様が来られて、

部屋の気温にびっくり。

「あ、ごめんなさい! 気がつかなくって・・・」

(いえ、いいんです。すこし痩せられましたから・・・)


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マーちゃん

マーちゃん の紹介

ぴあの屋ドットコム代表 ピアノを弾く時にはリチャード石山と言われています。
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