妻は私のことを「まーちゃん」と呼びます。
「まーちゃん、やっぱり女性のいるお家に調律に行くんだから、身だしなみをきっちりしないとね。
今度、ブランドのいいスーツを買ってあげる」
私からすると目玉が飛び出るほど高級なイタリア製スーツを妻は買ってくれました。
ある意味で職人なんだから作業着でもよさそうなんですが、
やはり女性のいるお家へ入って作業しますので、きちっとキメテ行かないと・・・。
さすがブランドスーツは違いますね。
鏡にうつした姿に「私ってこんなにスタイル良かったかな?」と思ってしまうほどでした。
2年ほど経ったある日、なんかヒザがスースー風通しいいんです。
えっ?!
恐る恐る足のひざを見てみると・・・・。
穴が開いてる・・・。
10年玉ほどの大きな穴! あきらかに擦り切れて開いた穴です。
すぐピンときました。
そうなんです。調律師はひざまづくのです。ペダルの調整をしたり、乾燥剤を入れ替えたり・・・。
私のお客様の95%はピアノ用湿度調整剤(乾燥剤)を希望されます。
これはピアノの下のパネルを開けて交換するのですが、その時しゃがんで左ヒザをついて作業しますので
それが積み重なってこう言う結果に・・・。
とほほ・・。イタリア製なのに・・・。
普通、スーツのヒザに穴なんて開きます?
さらに、後ろポケットも穴開き寸前。
そうか、ポケットの中の財布と車のシートが擦れるからかぁ・・・。
だって、1日100キロ(3年で10万キロ!)は走るし仕方ないよ~。
そう言えば新入社員の時には自転車で毎日5件回っていたので、
太ももの内側にも穴が開いたことあったけ・・・。
やっぱりブランドのスーツは、片手にワインでも持ってスマートに着ないとね。
次の日曜日、妻はため息をつき、
「これは必要経費よね。お客様の家に入るんだからちゃんとしないとね。」
と無理やり自分を納得させながら、こんどはイギリス製を買ってくれました。
(妻に感謝。お父さんは頑張らないと・・・。でもまた、穴あくと思うよ。仕事だもんね)