日々の作業で私が考えることを今日はお話しますね。
たとえばネジを締める場合。
6か所のネジを締めないといけないとします。
1か所づつ、しっかりと締めていっても、
6か所全部を締めると、最初のネジが緩んでいます。
また最初からやりなおしです。
私のやり方は、最初から大まかにネジを締めていきます。
6か所終わったら最初からもう一度締めるつもりでやるのです。
なんどかやっているうちに、全体が均等に締まっていきます。
それでいいのです。
最初から、完璧にやろうとしても無理がかかります。
これがバランスということです。
全体をみて行動するということ。
それでは、お茶を急須で6つの湯飲みに入れるとします。
最初の1杯めから満タンに入れると、6杯目の湯のみのお茶がとても濃くなってしまいます。
少しずつ全体が同じ濃さになるように入れていきますよね。
これも分かりやすい例です。
ピアノの調整作業も、最初から完璧に仕上げていこうとすると
結局最後にはやり直しが必要になるものなのです。
初めにざっとやって、70%ほどの出来でとにかくやってしまうことです。
そして、見直して極端にずれているところを直す。
それで80%の出来になって、もう一度ざっと見直して、90%の出来。
このように、全体的にバランスを見て精度を上げていくのが、
結局は早く正確に仕上がるコツなんです。
私は、調律がとても速いです。
調子のいい時には、35分で仕上がります。
通常で45分くらい。
もし、1時間半もかけてやると、私の場合はかえって精度が悪くなります。
バランスがよくないんです。
もちろん耳がつかれてくることもあります。
「今度の調律師さんは時間をかけて丁寧に調律してくれた」、といわれるお客様もありますが、
そういう基準でいうと私の調律は丁寧じゃない、という評価になってしまいます。
かけっこに早い人もいれば遅い人もいる。
調律がゆっくりだから、という基準ではなく、その仕上がりがどうかということが
大事だと思っています。
時間は早くても、私の調律はとても狂いにくいんです。
1年後でもけっこういい状態をキープしていることが多々あります。
もちろん、調律以外の調整や修理があれば時間はたっぷりかかります。
なにがいいたいのかといいますと、時間じゃないんです。
バランスよくいい状態になれば、弾いていて気持ちいい状態になれば
私はそれが一番だと思っているのです。
社員にもいつも言っています。
寸法どおり整備ができたからそれでよし、ではない。
お客さんの立場で、ピアノの前にすわって弾いてみて
いい音がして、弾いていて気持ちいいかどうか。
この意識をわすれたらダメだということです。
なぜ、その寸法にしなければならないのか。
学校で習ったから?
違います。
その寸法で調整することで、弾きやすくていい音がして
お客様が喜んでくれる。
この意識が大切だということなんですね。
10月にものすごい数のピアノが売れたものですから、
社員は遅くまでのこって、一日でも早くお届けできるように頑張っています。
その中で、このような意識を絶対に忘れずに作業を続けてほしいと
思っています。☆まーちゃん☆