ピアノの裏側はなかなか見ることがないと思いますので、
エンシュウピアノの裏の部分を説明したいと思います。
まず一番驚いたのは、支柱が6本もあるということ。
普通、121cmの小型1型モデルは、4本で十分です。
ヤマハピアノは、131㎝の大型3型モデルでも、構造計算して充分だと判断して4本支柱で製造しています。
それでいいとは思うのですが、とにかく頑丈に作りたいという遠州楽器の考えでしょうか。
びっくりしました。
それからもう一つびっくりしたことは「助響板」をなくしたということです。
助響板はピアノ製造のセオリーとして昔からあるもので、
分かりやすく言うと、池に石を投げると円になって広がっていきますよね。
でも池の形が四角いと壁に反射した時に乱反射してしまうように音も同じように円になって広がっていきます。
なので、その音の乱反射を防止するためにあるのが助響板なんです。
それをあえて遠州楽器ではなくしているのです。
なぜなら、小さなピアノでも響板を大きくフルに使えることで
重低音を豊かにしたいからなんです。
高音部に関しては問題ないのですが、低音部は響板の面積に大きく依存します。
さらに、音を伝導させる響棒同どうしを、共振桟(きょうしんさん)という木材でつなげて音を良くする設計をしています。
これは、調べてみるとベヒシュタインのホフマンモデルのグランドピアノに採用されている方法のようです。
ですので、アップライトピアノでこの方式をつかっているのは、おそらく遠州楽器のみではないかと思われます。
音の出し方を、低価格のピアノにありがちなハンマーの打弦のアタック音に頼るのではなく、
しっかりとボディの部分でも、やさしくあたたかく滑らかであってしかも芯のある音を出すための、いろいろな工夫を感じることができます。
耐久性のある長期間使うことができるように支柱を6本も入れ、
響板も変化の少ない積層スプルースを採用したのも、職人たちが考えに考えた末に設計した方法だと思います。
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