調律師の夏は、「蚊」との戦いでもあります。
調律に集中していると、ぷぅ~んとさりげなく後ろから近づいて「プチッ!」。
私は献血は好きですが、蚊だけは手土産の「毒」がありますので困ります。
また、堂々と正面から攻撃してきませんので卑怯です。
たいてい、耳たぶか首の後ろ、もしくは靴下の上から採血を開始します。
数分後毒が回り、ジワジワと痒くなっていきます。
調律学校でこんな歌が流行りました。
「ブンブンブン♪・蚊が飛ぶ♪」
ブンブンブンのあとに、必ず四分休符と八分休符を入れて歌ってください。
私は対策を考えました。
お客さんに蚊取り線香やキンチョールをお願いのも気が引けますので、まずは動体視力を鍛えて捕獲することにしました。
動きは緩慢なので見つけさえすればつかむことはできます。
ここで、大切なのは「つかむ」ということです。
「パン!」と手をたたいてやっつければ大きな音が出て、
どうして調律中に拍手をしているのかと、隣から奥様がビックリして出てこられるからです。
蚊を追うときのコツも分かりました。背景が白い壁でないと必ず見失います。
蚊も賢いようで、タンスなどの背景の暗い色のところへ逃げこみます。
一瞬でも見失うと、もう全然違うところに出現しています。
そうそう追いかけ続けることもできませんので、次に蚊の嫌う超音波のでる機械を、
キーホルダにつけて腰にぶら下げることにしました。
太陽電池で動くのでいいのですが、調律を始めてスイッチを入れると、「キーーーーーン」と超音波が聞こえるのです。
そう、調律師は普通の人よりも聞こえる音域が広いのか、たいそう調律の妨げになることが分かりました。
仕事を始める前に、体にスキンガードも吹き付けて見ました。
そのときも、うっかり耳に吹き付けるのを忘れてしまい、やられてしまいました。
耳なし芳一の気分です。
さらに、蚊はカッターシャツの上からでも血を吸う事がわかりました。
これもだめ、あれもだめ、結局結論としては、調律中は蚊に献血を許し、
ムヒS
を携帯することが最善の方法だと悟りました。